
遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が整ったら、いよいよ実際の名義変更に進みます。
名義変更は、財産の種類ごとに必要な書類や手続き先が異なるため、1つずつ丁寧に進めることが大切です。ここでは特に件数の多い預貯金と不動産を中心に、その他の財産も含めて解説します。
預貯金の名義変更(払戻手続き)
被相続人が亡くなると、その口座は原則として凍結され、引き出しや振込ができなくなります。凍結解除や払戻しをするには、金融機関に所定の手続きを行います。
必要書類(一般的な例):
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書(または遺言書)
各金融機関の所定の書類(払戻依頼書など)
最近では、相続手続きの専用窓口やキットを用意している銀行も多く、まずは電話で問い合わせるとスムーズです。金融機関によっては郵送対応も可能です。
不動産の名義変更(相続登記)
不動産の名義変更には、法務局での「相続登記」が必要です。2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります(怠ると過料が科される可能性あり)。
必要書類(代表例):
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本
遺産分割協議書(または遺言書)
不動産の固定資産評価証明書
登記申請書
相続人の印鑑証明書
登録免許税(評価額×0.4%)
登記申請は自分で行うことも可能ですが、不動産が複雑な場合やミスを避けたい場合は、司法書士に依頼するのも一つの方法です。
その他の財産の名義変更
自動車:運輸支局で「相続による移転登録」を行います。車検証、印鑑証明、遺産分割協議書などが必要です。
株式や証券口座:証券会社ごとに手続きが異なります。被相続人の口座情報と相続人情報の確認が必要です。
生命保険:受取人が指定されていれば、相続とは別に保険会社に直接請求できます(非課税枠あり)。
公共料金・会員権:使用中の契約(電気・ガスなど)は、使用継続者に名義を変更するか、解約します。
名義変更は「形式的な手続き」と思われがちですが、完了しないと財産を実質的に使えないまま放置されてしまいます。また、相続税の申告が必要な場合には、各財産の名義が誰になったかが申告内容に直結します。
相続財産ごとに必要な書類と流れを整理しながら、一つずつ確実に進めましょう。