
相続手続きの中でも、最も重要で時間がかかる作業のひとつが「相続人の確定」です。
誰が相続人になるのかは、被相続人(亡くなった方)の戸籍を調べることで法的に判断されます。遺産の分け方を決める前に、まずは“相続する資格を持つ人”を正確に特定することが不可欠です。
●相続人の種類と順位
民法では、相続人の範囲と優先順位が定められています。主な相続人は以下の通りです:
配偶者(常に相続人)
第1順位:子ども(実子・養子・認知された子を含む)
第2順位:父母(または祖父母)
第3順位:兄弟姉妹
たとえば、子がいれば両親や兄弟は相続人になりません。子が先に亡くなっている場合は、その子ども(孫)が代襲相続することもあります。
●戸籍の収集が必要な理由
故人の相続人を確定するには、出生から死亡までのすべての戸籍を収集する必要があります。結婚や転籍、改製(戸籍の様式変更)などで戸籍が複数にわたっている場合が多く、1通だけで済むことはまれです。
また、戸籍をたどる中で、知られていなかった子どもや養子、認知された子などが記載されていることもあり、「想定外の相続人」が見つかることもあります。
●戸籍の取り寄せ方法
戸籍は本籍地のある市区町村役場で申請します。遠方の場合は郵送でも可能ですが、以下の書類が必要です:
1 被相続人との関係がわかる本人確認書類
2 申請者の戸籍(相続人であることを証明)
3 手数料(1通につき450円程度)
4 返信用封筒(切手貼付)
申請書には「出生から死亡までの連続した戸籍を請求します」と明記するとスムーズです。
●ケース別の注意点
・離婚や再婚があった場合:前婚の配偶者との間の子どもも相続人になります。
・認知された非嫡出子:戸籍に記載されていれば、実子と同じ権利を持ちます。
・養子:戸籍に記載があれば実子と同様の相続権があります。
・兄弟姉妹が相続人の場合:亡くなった兄弟の代わりにその子(甥・姪)が代襲相続することもあります。
相続人の確定は、その後の遺産分割や名義変更、相続税の申告などすべての手続きの前提になります。間違いや漏れがあると、後に大きなトラブルの元になります。
正確な戸籍の収集と確認は、地道で時間のかかる作業ですが、ここを丁寧に進めることが、スムーズな相続手続きへの第一歩です。次章では、遺言書があるかどうかの確認と、その扱いについて解説します。