
「相続」と聞くと、遺産の分け方でもめるイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、相続とは単なる財産の分配ではなく、亡くなった方の社会的な手続きや責任を引き継ぐ、生活の延長線上にある一連の作業です。
まずは、相続手続きがどのような流れで進むのか、その全体像をつかむことから始めましょう。
相続手続きは、大きく以下の6つのステップに分けられます。
1 死亡届と行政的な手続き
まず、死亡後7日以内に市区町村に死亡届を提出し、火葬許可を取得します。健康保険や介護保険、年金の停止などもこの段階で行います。
2 相続人の確定
相続手続きは、誰が法定相続人になるかを確定するところから始まります。そのためには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍を収集する必要があります。複雑な家族構成(再婚、認知、養子など)の場合は特に慎重な確認が必要です。
3 遺言書の確認
遺言書があるかないかで手続きの進め方は大きく変わります。遺言書があれば、その内容が優先されますが、公正証書以外の遺言は「家庭裁判所での検認」が必要です。
4 相続財産の調査と評価
預貯金や不動産、株式、自動車、借金など、被相続人が持っていたすべての財産と負債を調査します。どこにどんな資産があるのか分からないことも多いため、通帳や郵便物などから手がかりを探していく必要があります。
5 遺産分割協議
相続人全員で財産の分け方を話し合い、合意の上で「遺産分割協議書」を作成します。これが名義変更などの手続きに必要な書類になります。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停・審判に進むことになります。
6 各種名義変更と税務手続き
協議がまとまったら、銀行口座、不動産、自動車などの名義変更を行います。また、相続税が発生する場合は、原則として10ヶ月以内に申告・納税する必要があります。加えて、亡くなった方の所得税(準確定申告)も行います。
以上が、相続手続きの全体的な流れです。
一見すると大変そうに見えますが、一つひとつの手続きには明確なルールがあります。
まずは「ゴールを知ること」からが第一歩です。焦らず、順番に進めていきましょう。